図1 右前方の音


図2 位相干渉
金色部分は磁石ですが、
ここは動きません(笑)


周波数=1秒間に何回振幅するか
単位 ヘルツ(Hz)
位相では1周期を360°で表す

 人間の耳は大変優れたセンサーです。そして脳内では、「音」を認識するためにスーパーコンピューター顔負けの情報処理がされているようです。
 図1をご覧ください。「音がどの方向から聞こえてくるか?」人間はどうやって感じ取っているのでしょう?
 スピーカーから発せられる「音」は、音の波=「音波」として左右の耳に到達します。このとき、左右の耳へ到達する波には次の違いが生じます。

 @ 時間差(音速は毎秒340 m/s:気温15℃、1気圧)
     左耳への距離が右耳に比べ10p遠いと、0.0003秒遅れる。
 A 音圧差(平たく言うと、音の大きさ)
     距離が2倍になれば、音圧は1/4になる。
 B 位相差(波の高い・低い。水面の波を思い浮かべてください。図では、右耳は山、左耳は谷になってます。)
     実際には音波は、図のように蛇行しているわけではなく、空気が「密−疎−密」、
     あるいは空気圧が「高→低→高」と交互に繰り返されているわけです。「↓後述」
 C 周波数特性の違い(低音〜高音まで乱がれなく、フラットに聞こえるかどうか)
     頭部や顔に隠れる左耳へは、波長の短い高音は減衰している。

 この中で左か右かを判断するのに、最も影響が強いのは音圧差ですが、それだけでは前後上下の区別はできません。「脳」は、上記の@〜Cや他の要素をもとに、音源の方向や距離・空間の広さを割り出しています。更には、視覚情報との協調や補正さえ行っていることが、最近分かってきました。例えば、野球の外野手は、打者の動きと、遅れて届く打球音をシンクロさせて情報処理しているらしいことが明らかになっています。

 さて、上記の要素には、「位相」と言う聞き慣れない言葉がありますね。
 スピーカーは振動板を前後に動かして音を発生させます。前に出れば空気は押されて圧力が高く(密)なり、後ろに下がれば薄く(疎)なります。音の正体は気圧の変化(疎密波)です。なお、水の波は進行方向に対して横に振幅するので(横波)、音波は進行方向と同じ方向なので縦波ともいいます。そして、さざ波のように細かければ高い音、ゆったり大波であれば低い音になります。なお、さざ波が岩の後ろ側まで届かないように、高音はちょっとした障害物で遮蔽されてしまいます。低音は回析といって大きな障害物でも回り込みます。

 位相とは、水の波に例えると、波の頂点なのか・途中のどの辺なのか・谷なのかといった、波形の位置を表す言葉です。
 図2では、周囲の水色が大気圧(1気圧)を示しています。スピーカーから出た音波で、圧力が高い所どうしが重なると、青色が濃くなってますね。圧力が低い白色どうしが重なれば白いままです。ところが、右の高圧と左の低圧が重なったところは、打ち消しあって、大気圧と同じになってしまいます。これを位相ズレと呼び、音が減衰したり消えてしまうこともあるわけです。
 位相ズレは一つの注意点ですが、視聴位置と、スピーカーのセッティングがいかに大切であるか。ご理解いただけるでしょう。

 とりあえず、更新はここまで、次回をお楽しみに!