「料理は得意じゃないけど、おいしいものを食べるのは大好き!」という方も多いでしょう。オーディオも同じことです。「理屈はよく分からなくても、気持ちよい音を聴きたい!」それは恥ずかしいことではありません。

 逆に、「オーディオマニアは音楽を聴いてるんじゃない、音を聞いてるんだ。」「高い機材じゃなくても音楽の魂は伝わるぜ!」という考え方にも一理ありますが、良い音で聴くに越したことはないし、オーディオに対する最低限の知識はあった方が良いことも確かです。

 身近な食べ物の例として「ラーメン」に例えると、カップラーメンは手頃で結構おいしいですが、それだけで「ラーメンを知っている、十分だ!」と言う人はいないでしょう。
 同様に、ラジカセやミニコンポは生活空間でも邪魔にならず、気軽に使えて便利ですが、ぜひ、
それだけの体験で終わらないで欲しいと思います。

 では、良い音の見分け方ってあるのでしょうか?

 味覚の発達が十分でない子供達には、スナック菓子のような味付けは好まれます。音なら、よく言われるのが「ドンシャリ」系。高音は「シャリシャリ」、低音は「ドンドン」。一見、メリハリがあって「オッ!」と思いますが、聴いていると疲れるし、不自然であることに気付きます。


コショーにしか見えない(笑)

 高音は料理で言えば「塩」です。味付けの基本ですね。単に塩辛いかどうかではなく、「天然塩」のようにほのかな甘みが感じられることが大切。キンキン、シャリシャリしないことはもちろんです。どこまでも高く伸びやかで澄んでいること。ツィーターの性能に負うところが大きいです。

 
低音は「油」。若いときは、こってりしたものが食べたいものですが、多すぎると気持ち悪くなってしまいますね。料理にふくよかさや甘み、ボリューム感をもたらす「油」は、過不足無いことと同時に、「質」が極めて重要です。

 低音について誤解されやすいのは、「小さい部屋だから、音量を上げないから、大きなスピーカーはいらない」とか、逆に「ズンズン響くのはいやだ」という意見。特に
「重低音」に対しては誤解されやすいと思います。「重低音=大音量」ではありません。地鳴りや和太鼓の音も、遠くから聞こえれば「ささやくような音量の重低音」が存在することは容易に理解できるでしょう。
 重低音とは、極低周波領域の音であり、ミニコンポ等で喧伝されている「重低音」は、単に低音(重低音よりは高い領域の音)を
無理矢理ブースト(音圧を上げる)しているに過ぎないのです。
 
低音とは「いかに大量の空気を動かすか?」ということですから、小型スピーカーでは限界があります。お風呂場で「さざ波を起こす」のは指一本でできますが、湯船の湯「全体がぐわんぐわん」と動くためには、入っている人間そのものが前後に動かないとダメなのと同様なわけです。

 油は量が多すぎても少なくてもダメ。しつこくてもダメです。若者に多い傾向ですが、ズンズン、ビリついた大音量の低音をまき散らしている一部のカーオーディオなどは、
変質した油を大量に使っているようなものです。本物のカーオーディオはあんなものではありませんので、誤解無きように!

 では、人間の声が属する領域の中音域は・・・?
私は、
「うま味」あるいは「こく味」に例えたいと思います。料理の基本ですね。近年、こく味の正体が明らかにされ、調味料として活用されています。
 「こく味は、うま味を含めた味覚に全体的な厚みと奥行き・後味を与える重要な役割を果たしている・・<中略>・・こく味が、食品の調理過程において発生する香気成分であるピラジン類と、特に発酵や熟成過程で生成するペプチドがポイントである・・<略>」協和発酵のHPより。

 俳優さんの
渋いモノローグ、ナレーターの独特の語り・・・どことなく、こく味に似てませんか?
 良いオーディオは、楽器や歌声の
一つ一つがはっきりと聞き取れます。何か一つの強い音にかき消されたり、全部、団子状態に一緒くたになることがありません。素材本来の味を活かす和食料理や、ラーメンで言えば、ごまかしのきかない正統派しなそばに通じるかもしれませんね。

 そのために必要なこと・・・、それはまた別のコーナーでご紹介します。