図1 映画館のスクリーン


図2 ホームシアターでの設置例

 映画館でのセンタースピーカーの役割は、どの席に座っても画面中央からセリフが聞こえるようにすることです(ステレオ VS サラウンド参照)。しかし、ホームシアターではベストの位置で視聴が可能なため、2チャンネルステレオ(左右2本のスピーカー)であっても、セリフは中央から聞こえます。
 
 映画館のスピーカーは、図1のように、スクリーンの後ろ側に高さをそろえて配置されます。映画のスクリーンは、サウンドスクリーンと呼ばれ、無数の穴があいており、音声はこの穴を通じて視聴者に届きます。なお、高音域になるほど、障害物による減衰により聞こえにくくなるため、映画の音はスクリーンを通したときに最適になるよう、高音域が強めに録音されます(ハイ上がりと呼ぶ)。この補正のために、一部のAVアンプには、高音域を減衰させる機能「Re-EQ(リ・イーキュー)等」が付加されています。なお、ホームシアター向けにもサウンドスクリーンは製品化されていますが、高価であり一般的ではありません。

 さて、ホームシアターでは、一般的なスピーカー配置は図2の様になります。問題点は、左右に移動する音源があった場合、(この図では飛行機です)センタースピーカーの部分で、音像が下に下がってしまうことです。スクリーンサイズが大きくなればなるほど、左右スピーカーのとセンタースピーカーの高さにズレが生じます。

 さらに重要な点として、次のようなことが挙げられます。

 オーディオを始めるきっかけは、「いい音で音楽を聴きたい」ということでしょう。その場合、限られた予算の範囲でよりよい音を求めるためには、左右二つのスピーカーにできるだけ予算を割り当てたいわけです。スピーカーは低音をしっかり再現しようとすれば、大きな箱容積が必要になります。また、高音から低音まで幅広く歪み無く再現するには、一つのスピーカー(正しくはスピーカーシステムと呼ぶ)について、高音域・中音域・低音域というように、それぞれの音域を受け持つスピーカーユニット(トゥイーター・スコーカー・ウーハー)を用意する必要があります。このような、音域を3分割したスピーカーを3WAY(スリーウェイ)と呼びます。 

 ちなみに、図1、2のスピーカーは2WAYです。図2のセンタースピーカーはスピーカーユニットを3つ使っていますが、両端の丸いユニットは、どちらも中〜低音部を受け持つ全く同じユニット(ミッドバスとか単にウーハーと呼ぶ)です。この場合を2WAY3スピーカーと呼びます。高音域の方が音の指向性が強いため、左右のスピーカーと同じ物を横に倒して使うと、トゥイーターのある方に音像が引っ張られて左右どちらかに偏ってしまうからです。このようなスピーカーを仮想同軸と呼びます。

 つまり、厳密に言えば、左右のスピーカーに匹敵するセンタースピーカーを用意することは、サウンドスクリーンを使わない限り不可能なわけです。
 つづく・・・。