図1 ステレオの試聴位置

 角度が広い場合は
スピーカーを内側に向ける




図2 サラウンドの試聴位置

正しく聞こえる位置は1点しかない




図3 左の音は聞き取れない




図4 どの位置でも真ん中から聞こえる

 「ステレオ VS サラウンド」と刺激的なタイトルにしてみました・・・笑)。 しかし、優劣をつける意図はありません。とはいえ、これから機材導入する方にとっては「両者一長一短」と単純に片づかない重要な問題だと思います。

 再生装置の理想は「原音再生」といわれます。本物の演奏や歌声に(正確に言えば記録された信号に)、何も足さず、何も引かず、いかに歪み無く、いかに忠実(Hi Fidility = ハイ・ファイ)であるか、ということでしょうか。
 その指標はいくつかあり、「超高音から超低音までフラットに再生できるか」等、いくつかのポイントがあります。

 ここでは、
定位(楽器などの方向が明確に分かる)や音像(楽器や歌手が本当にそこに存在するかのような実感を差し、大きさで表現する)を重視して書いてきましたが、これらは、高忠実度再生にとっては、どちらかというと優先順位は高くない方でしょう。しかし、2チャンネルステレオも、多数のスピーカーによるサラウンド再生でも、スピーカーとスピーカーの間に音像を作り上げ、明確な定位を築き上げる点では基本は同じです。ところが、基本は同じなのに、ずいぶん違う面もあるのです。

 「ステレオを理解しよう!」にも書きましたが、ステレオでは、2本のスピーカーで、「左右」、「前後(奥行き)」、「上下(高さ)」、そして残響や反射音までも再生して、「空間の広がり」を再現しています。このとき図1のように、試聴者は左右スピーカーの真ん中に位置すれば、ある程度前後の位置は自由です。一般的には
「左右角60度以内とか、「二等辺三角形」や「正三角形」の頂点に位置すればよいと言われます。スピーカー正面が試聴者を向くように逆ハの字にセッティングすれば、広い角度であっても、真ん中から歌手の歌声などは聞こえてきます。
 ちなみに、
反射音まで前方のスピーカーから聞こえてくるのは不自然ではないか?あるいは、ステレオを聴いている自分の部屋の(壁の)反射音とは矛盾しないのか?という疑問もわいてきますね?これは、後述します。

 ステレオでは、左右スピーカーの間にしか音は広がらず、その外側にも音が広がることは無いと考えられますが、実際にはそうではありません。@作為的な位相調整等による錯覚を利用したもの。A「ワンポイントオフマイク」のようなシンプルかつマイクセッティングが上手な生録音。B部屋の壁などに音をぶつけて反射させる。といった方法で、音の広がりが再現されることはあるようです。
 特に、Aについてはホールエコー(コンサートホールの広大な空間・壁からの反射)などにより、2つのスピーカーであっても、
音は3次元的(左右、前後、上下)に広がると言われます。マルチマイクや「打ち込み」等、人工的な編集では、この自然な広がり感はなかなか再現できないとされています。
 化学調味料だけでは、味わい深い料理が作れないことと似ていますね(音を料理に例えたら・・・参照)。実は、たった2本のスピーカーによる2チャンネルステレオは奥が深いのです。

 一方、多数のスピーカーによるマルチチャンネル再生の起源は、古くは
1960〜70年代の4チャンネルステレオにまで遡ります。映画史上、最も優れた作品とされる「2001年宇宙の旅」が、この4チャンネルステレオでした。また、その頃、レコードの4チャンネルステレオもいくつかの方式が提案され、商品化もされましたが、十分な普及には至りませんでした。

 現在の5.1チャンネルサラウンドにつながる
基本システムといえるのが、70年代終わりに開発され、現在でも使われているドルビーサラウンド方式です。これを最初に採用したのが、SF映画の金字塔「スターウォーズ」(後にEpisodeWと呼ばれる、ルーク・スカイウォーカーの冒険編3部作の第1部)でした。なお、このドルビーサラウンド方式は、2チャンネルステレオにエンコード(記録)可能なため、広く普及しました。

 
映画館でサラウンド再生が採用されている理由は、いくつかあります。テレビに押され気味であった映画産業が、「テレビとの差別化を図るため」というのが最大の要因かもしれません。また、サラウンド再生の良さとして「音に包まれている感じがする」とも表現されます。しかし、一番の理由は、2チャンネルステレオでは、映画館内の着座位置によっては、聞こえてくる音の方向がかなり限られてしまうという問題に対処するためだと考えられます。仮に、最前列の右端に座った場合、図3のように、目の前の右スピーカーの音ばかりが聞こえ、かなり右側に偏った音の聞こえ方になってしまいます。

 そこで、図4のように、
画面中央に配置した「センタースピーカー」からセリフを発することによって、映画館のどの位置に座っても、映画で重要なセリフを画面中央から聞こえるようにしたわけです。しかし、この方式を家庭に持ち込むには、重大な問題が立ちはだかっています。

 
センタースピーカーは重要か?へどうぞ!

つづく・・・。