そ よ 風 は 何 い ろ
- roadster story -




B6にせよBPにせよ、ファミリア用の流用ではある。
しかし、実用型ツインカムエンジンであることの意義は少なくない。

16  Inline four
 
 「ニワトリが先か卵が先か?」ではないけれど、エンジンオリエンテッドなクルマやメーカーと言うのは確かに存在する。エンジンオリエンテッド、すなわち「まず優秀なエンジンありき」という姿勢と言ったらよいだろうか。国内ではホンダがその最右翼だろうし、バイエルン原動機工場の名前を持つBMWもそんなイメージだ。

 しかし、自動車はエンジン単体で成り立っているわけではない。まず、その車がどのような使われ方をするのかがイメージできなければ、全体のコンセプトなり方向性を定めて開発することはできない。

 ロードスターのエンジンについては非力だとか、ファミリアの直列4気筒の流用だとかいろいろ言われてはいる。良く聞く要望しては、ロータリーエンジンの搭載だろう。何を隠そう、私のWEBネーム「RX5」も、「ロータリースポーツを表すRX系とロードスターを表すMX−5のボディを融合させたらどうか」との想いからつけたのであるが、今では、そうは思っていない。また恥ずかしながら、RX−5とは2代目コスモ「コスモAP」であることを知ったのも、WEBネームをつけた直後だった。

 さて、ロードスターというクルマ、競技車両としても面白いクルマに違いないが、そもそもがオープンカーであり、日常的なシーンでの軽快感や楽しさに重点がおかれている事は間違いない。日常のシーンがサーキット等と違うのは、ストップ&ゴーが頻繁にあることだ。サーキットは一度走り出してしまえば、ゼロ発進のことはほとんど考えなくても良い。そして、過程ではなく結果が全ての世界である。

 一方、ロードゴーイングスポーツは違う。そもそも、1トンにも及ぶ巨大な質量の固まりが、静止状態から動的状態に移行するには莫大な力が必要である。それは、エンジン回転をあげパワーを絞り出すことによって対応するべきではない。そもそも、高回転型エンジンは低回転時のトルクが小さいために、1速のギヤ比は低い設定である上に、フライホイールを軽くする傾向があるので発進は苦手である。発進トルクを重視してフライホイールを重くすると、低速ギヤほどエンジンパワーがフライホイールを回すことに費やされてしまい、やはり発進には不向きなのだ。

 ところが、低〜中回転トルク重視型のエンジンはギヤ比の設定も高くできる上に、そもそもトルクがあるので、フライホイールを軽くすることが可能である。日常の使いかってやロードゴーイングスポーツには、アイドリング+アルファの1,000回転程度でのタフネスさや、4,000回転以下までの過渡特性が極めて重要になってくる。

 なお、可変吸気システムや可変バルブタイング&リフト機構等で、フレキシブルなエンジンができると思ったら間違いで、それほど簡単な問題ではないようだ。なぜ、ロードスターが1.6〜2.0Lクラスの直列4気筒「Inline four」であるべきなのか?
 完全バランスエンジンと呼ばれる「直列6気筒エンジン」や「V型エンジン」との比較を交えながら、検討してみよう。

(2004/10/31)

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