そ よ 風 は 何 い ろ
- roadster story -




トルクコンバーターの構造 「クルマのメカ & 仕組み図鑑」より
(素人にも分かりやすい解説書は意外に少ない)

23 3要素・1段・2相型

  AT(オートマティック・トランスミッション:自動変速)車のカタログに書かれているトルクコンバーターの形式が、「3要素、1段、2相」である。トルクコンバーターとはATの心臓部であり、クラッチとトルク増幅作用の2つの役割をもっている点が、MTマニュアルトランスミッションには無い性質である。

 トルクコンバーターの構造は、向かい合った扇風機によくたとえられるが、それは流体クラッチの構造であり、間にステーターを介在させる点がトルコンのトルコンたる部分である。

 3要素とは、@エンジンからの軸出力をオイルの流れに変えるタービン(羽)であるポンプインペラーと、Aそのオイルの流れを受け止め、力を変速機に伝えるタービンライナー、 Bタービンライナーから戻ってくる逆向きのオイルの流れを反転させ、トルク増幅作用に貢献するステーターの3つを指す。
 1段とは、タービンライナーの数。
 2相とはトルクコンバーターと流体クラッチの二つの働きをするという意味。なお、トルクコンバーターからステーターを無くしたものが流体クラッチで、流体クラッチにはトルク増幅作用はない。

 トルクコンバーターのトルク比は1〜2.5程度で、それ自体が無段階の変速機にもなっている。従って、本来は3速ATといっても、MTの3速とは異なり、トルクコンバーターのトルク変換機能と3速ミッションの組み合わせでより柔軟な変速機能(トルク変換機能)を持たせることが出来るのである。(当たり前のことだが、トルクアップを図るほど力は増大するが、スピードにはつながらない)

 ただし、トルクコンバーターはトルク比が大きいときは伝達効率が悪いことから、近年では、ミッションを多段化し、トルクコンバーターは主に流体クラッチとして作用させる方向に変わってきている。変速が完了すれば、ポンプインペラーとタービンライナーを出来るだけ直結(ロックアップ)させ、10%あるといわれるトルコンのロスを出来るだけ減らすようにし、燃費を改善している。しかも、最近は電子制御により油圧やエンジン回転まできめ細かく調整するため、変速ショックが感知できないほどである。

 以上のように、トルクコンバーター型のATが、なぜ広く普及しているのかがよく理解できるだろう。

 現在のトルコンATは良くできている。反応速度も劇的に改善されていることから、クラッチワークから開放されてハンドリングに集中できるATは、スポーツドライビングにも有効という意見は、なるほど間違いではないかもしれない。

 しかし、しかしである。スポーツとは、自らの行為が下手であればなぜ下手なのか、どのように改善していけばスムーズな動きになるのか、一歩一歩、自分の技術を磨いていく楽しみでもある。つまり、フィードバックなのだ。
 例えば、テニスのサービスを打つのに、ボールがスイートスポットに当たるように調整してくれる自動ラケットがあったとして、果たしてそれでスポーツだといえるだろうか?(これは、扱いやすくスイートスポットの広い、通称「デカラケ:現時では主流になった」とは次元が異なる問題だ。)

 少なくとも、直結状態でない部分でのトルコン(特にゼロ発進時)には、フィードバックというスポーツに一番重要な要素がかけている。スポーツカーの基本はマニュアル。それはいつの時代にも変わることはない。

(2005/5/29)
つづく・・・。

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